「団吉のNYより愛をこめて」より

182月 - による black999 - 0 - 読み物

勢い良くシャツを脱ぎ捨て上半身裸になった団吉は言った。
「さぁ、おれを早く打て!」貞男は鞭を握ると恐る恐る鞭を振るった。
ーピシャ。。。途端に団吉の罵声が飛んだ。
「馬鹿野郎!やる気はあるのか!もっと強く!」団吉は鬼の形相で言った。
「いいか、おれは馬なんだ、もっと強く、もっと激しく、ピシャリやれ!」
団吉は裸足で庭に出ると薔薇を一輪毟り取り口でくわえると言った。
「少しは気分だそうや」貞男はさっきよりも鞭を強く握りしめると勢い良く振りかぶった。
「こうか!」思い切って鞭を振るった。ピシャリ!いい音が鳴った。
その音に呼応するかのようにすかさず団吉の鋭い声が響く。
「もっと強く!」「こうか!」「むぅうう、、」
痛みをこらえるために口を噛み締めるたびにくわえた薔薇の刺が唇に突き刺さり赤い血がしたたり始めた。それに気付いた貞男は更なる異様な興奮を覚えた。
「こうか!、こうかぁ!こうかぁあぁ!」

鞭を振るう速度は徐々に早くなり、部屋には鞭のしなる音と打たれる肉体の音だけが響いた。
「こうか!団吉!こうか!」
ピシャリ!やがて革と血が混じりビジャ!という鈍い音に変わった。
「こうだろう!こうなんだな!」「こうだろう!ほら!いいだろう!!」
貞男の声が狂気じみた声が部屋にこだました。
団吉は薄れゆく意識の中で、今まで自分をとらえていた何かドロドロとしたモノがサッパリと離れていくような気がした。おれは自分を馬に見たててはみたものの、実際のところ本当に馬だったんじゃなかろうか?馬でない理由がどこにあろう?でなければこの爽快な心持ちは一体どこからやってくるのだろう。
団吉は夢想した。 両足で力の限り大地を蹴り、魂の限りいななき、感情の赴くままに駆け抜ける一匹の黒々とした荒馬になった自分を。 嵐に怯えながらも必要とあらば大河を渡り牧草を求め、力強く美しい雌馬に覆いかぶさる猛々しい荒馬になった自分を。肉体を鞭打つ音は一定のリズムを保ち心地よい雨音のように眠りへといざなった。

眠りに落ちたのか、気を失ったのかいずれにせよガックリとなった団吉の様子を見て貞男はようやく我に返り、鞭打つことをやめた。凝固しつつあるドス黒い血にまみれてはいたが、団吉の顔に薄っすらと笑みが浮かんでいたのを貞男は見た。

「団吉のNYより愛をこめて」より

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