動物王国の長

過去のデカダンス日記を整理しているとムツゴロウさんについて書いているものを見つけた。読んでいると7-8年前の夕暮れ時のことを思い出した。表参道を歩いていたら、ちょうどスパイラルの前辺りで小柄な身体に少し大きめのジャケットを羽織った爺さんが向こうから歩いてきた。何だか老人の少ないこの街で場違いな感じすらし、おや、こんな爺さんが、、、と思っているとすれ違う1メートル手前辺りでそれがムツゴロウさんだ、ということに気付いた。

ムツゴロウ青春記に代表されるムツゴロウシリーズはほぼ全て読んでいるほど好きだったので、何か伝えたい衝動に駆られたが、特に気の利いた事も浮かばなかった。また老人とはいえ、眼光も鋭くある意味、いや、むしろむき出しのゴリゴリの無頼派、日本プロ麻雀連盟の初代十段位を持ち、若い頃はその腕でそういうヤヴァい世界を生き抜いてきた、まさに歩く麻雀放浪記。しかも動物王国の長として世界中の動物をひれ伏させてきたその筋では百戦錬磨の怪物である。下手な事を言って怒られるのも嫌だったのでナニも言わなかった。今でもそれで良かったと思う。迂闊に彼のナワバリに近寄らなかったお陰で、わたしの右手の中指は損なわれる事なく済んだのである。