人間の絆

夜を徹して読み上げた「人間の絆」に興奮してジタバタしていると、左足のひざを思い切り 鉄アレイにぶつけてしまう。これが12キロもある重いやつなのでビクともせずにわたしの左足に 激痛が走る。痛みにのた打ち回りながら涙を流していると、J三郎が帰ってきて「ほう、「人間の絆」ですか。 兄上もついに目覚めたのですね。人としての絆に。さぁ、今日もサッカーですよ!絆を深めましょう!兄弟の絆を!」 と言いながら服を脱ぎローソクに火を灯しはじめた。「いや、今日は楽勝ですよ」と激痛をこらえながら 言うわたしをJ三郎は一喝。「戦争ですよ!サッカーとは戦争ですよ!ナニをおかしなことを!」 ”おかしいのはお前の頭だろう”などとはこういう場合には決して言ってはならない。ナントカに刃物だ。 「ええ、そうでした。戦争でした」U23、日本VSレバノンをテレビ観戦する。 中々点が取れずにイライラする。わたしの作戦では前半10分以内に1点は取り、最終的は最悪で5-0。 上手く行けば8-0くらいの気持ちだった。やはりそんなに簡単ではないのだ。特にアウェイは。 それにしてもアジア予選は面積が広いので大変だ。UAEから日本の距離と言うと大分あるだろう。 人口も5大陸で分けた場合にはダントツで一番だ。 ひざはまだ痛いのだが、不思議なもので激痛にのた打ち回っている時に「あぁ、わたしは生きているのだ、だって痛いもの」 という気持ちになった。今回は事故だが、わたしは自らに苦痛を与える時がある。 肉体的なモノ、精神的なモノ、それらのものはわたしに何か大事なものを思い出させる。大事なもの? いや、わたしはその中にナニか妖しげな快楽めいたものを見出しているだけなのかもしれない。
「The important thing was to love rather than to be loved.」by Maugham