陽が傾きかけ、木々がざわめき、雲が頬を真っ赤に染め出すとおれは黒いコートのポケットに ヒンドゥー教の聖典である「バガヴァッド・ギーター」を突っ込み、電車に飛び乗った。 ”結果には拘泥せずにただやるべきことをやること”おれはマグナムに弾を装填すると新宿の街を にらみつけ重たいケースを持ち直した。 ”そうだ。ハレ・クリシュナ・ハレ・ハレ・クリシュナ、あれ?・くりしゅな?” 「紅布」で行われた銃撃戦で我々は先陣を切り見事に一番槍を収めた。朱槍だ!朱槍の功績ものだ! しかし、そういう発言は問題になるので黙っておいた。MindsEyeのゆり殿とナガオ殿と秘密のコンタクトを図る。 「ドトール」という妖しげなアングラ喫茶店で珈琲を飲みながら神の啓示、 あるいは”あなたは光を見ましたか?”という暗号を使用し情報交換を行う。 任務が終了すると我々は次のミッションを行うために席を立つ。無言のままに。 「紅布」に戻り、ほとんどラモーンズと見間違えんばかりの ルックスで固めたエージェントSHIHOに横溝正史関係のビデオを手渡される。 黒いサングラスが不気味に光るがその真意は分からない。ただおれはここでも無言のままうなづき、 ソレが何を意味しおれを何処へ導くのか、をぼんやりと考えた。これは今日の最終ミッションであった。 いつもよりも早く、電車に乗ると家路に着いた。家に着くとおれは使い終わったマグナムに手をやり優しく抱いた。 「今日もなんとか切り抜けたな、明日も頼むぜ」おれはバーボンを一気に飲み干すと疲れた体と神経を、 そう、おれという名の野獣にしばしの休息を与えた。明日、また日が昇るまで。
バガヴァッド・ギーターと紅布と暗号
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