天上天下唯我独尊

誕生日を迎える。生まれ出るなり「天上天下唯我独尊」と言った記憶はないが、 人間は本来、みなそうあるべきだ。だから誕生日くらいは天を指差しそういうことを言ってみる。 ある年齢にならないと出来ないこと、逆にある年齢になると出来ないこと、というのを 特に考えることなく来てしまったので年を取ることには何の感慨もない。 ただ、このような放蕩息子をよくも寝ているときに刺殺などせずに、あるいは食事に毒などを盛らずに 育ててくれたものだ、と両親に感謝の念が沸き起こってしまった。 多分、天使がわたしの額にキッスをしてくれたのだろう。 ”あぁ、おれは一人で生きているわけではないのだなぁ”と急に世界が薔薇色に染まり、 わたしの頬を涙が伝った。 それで「母の日」にちなみ花を買い実家に送りつける。 感動的な本を読みたくなり家に着くと「白夜/ドストエフスキー」を探す。 見つからない。2冊あるはずなのにない。その瞬間、悪魔がわたしの背中を鞭で打った。 ”畜生め!この前、「掃除」という大義名分を借りて粛清をした時に捨てたな!くそったれ!あの野郎!” その後30分ほど呪詛の言葉を母上にぶつけながら捜索を続けるが、見つからない。 もう二度と掃除はさせないようにと、固く心に決心する。 仕方がないので日本史関連の本を読む。鎌倉時代の明恵上人とういう仏僧が「島」にラブレターを 書いた、という記述を見つける。 「島」にたいして自分の感情を綿々と綴ったらしい。これは素晴らしい。 このくらいの精神状態になれれば年を取る甲斐もありそうだ。