暗くなってご飯を食べ終わると「男らしさ」、「女らしさ」について考えてみようとする。 が、食事後で脳が不安定なので20秒ほどでソファの上でウツラウツラしてしまう。 するとJ三郎が帰宅する。物凄い剣幕で 「お兄様のマジックに対抗して、一つ手品をお見せしましょう!」という。 実はわたしは2週間ほど前にタネも仕掛けも満載のトランプマジックを披露して、J三郎のど肝を抜いていた。 しかし、この手品は一か八かの要素が強く、いつも成功するとは限らない。 わたしは大雑把な性格からか、幼少の頃より手品だとかプラモデルを作るだとか、間違い探しをするだとか、 あや取りだとか、鶴を折るだとか、その手の細かいことは苦手である。なので、トランプマジックをやると 非常に精神が疲れ、場合によっては真昼の空に死兆星を見ることもしばし。 このように、体質的には手品のような繊細な芸は向かないのだが、 ともかく、今はJ三郎マジックの話であった。
J三郎はわたしのお菓子フィギィアコレクションの毘沙門天が持つ5cmほどの槍を手に取ると、 「はい、これが3つ数えると消えます」と言う。 眠いわたしは「はい、はい、分かったから早くやってみせてくれ」とうながす。 「よく見ていてくださいね。行きますよ、いち、にぃ、の、さん!」 。。。消えた。。。槍が消えた。。。ひぃぃぃ! そんなことがあり得るのですか?これは一体どういうことですか? しかし、なんと言おうと確かに槍は消えてしまったのである。 わけが分からなくなったわたしは逆上した。「何処に隠したぁ!言え!言うのだ!」 わたしはJ三郎のむなぐらをつかみ詰問するが、ヤツはニヤニヤしたまま黙っている。 やがてわたしは「何処に隠したぁ。なんで、なんで槍のヤツは消えちまうんだよぉ・・・」と床に突っ伏し泣き出した。 「もう一度見たい?あぁーん?もう一度見たいのか?って聞いてるんだよ?」 わたしの狼狽ぶりに気を良くしたJ三郎は態度が急変し、ぞんざいな言葉遣いになっている。 それを聞いたわたしはまたもや逆上した。 「大体、そのT-シャツがいけないのだ!それが妖しい原因なのだ!脱ぐのだ!そのT-シャツを脱ぐのだ! 裸でやるのだ!裸になってもう一度やるのだ!タネも仕掛けも駄目駄目なのら!」 J三郎は「ふっ、低脳めが・・・」というと同じマジックを繰り返した。
「ほーれ、いち、にぃ、の、さん!」 その瞬間、わたしは生来の鋭い知性と観察眼であるトリックに気が付いた。 「そのカラクリィ、見破ったりィィィ!」わたしはJ三郎の手首を捕まえると巴投げで後方に投げ飛ばした。 「お見事・・・です」床に叩き付けられたJ三郎は血反吐を吐くとガックリとうなだれた。 同じマジシャン同士の暗黙の了解ということでトリックはここでは明かさない。それにしても、 厳しい勝負だった。しかし、わたしは満足である。今夜の勝者はわたしであるのだから。

