「これを聴いてみてくれ」 「もう出かけねばならんのですが」 「なぁに、手間は取らせんよ」 朝からJ三郎に作った曲をギターで弾いて聞かす。「うむ、素晴らしいです」 「その言やヨシ」わたしは煙草に火をつけ青空を眺めると満足感に満たされながら 煙りを吐き出す。
「あの。。」「うむ、なんだね?」 「本当は曲を弾いている時お兄様がジッとこちらをにらみつけるので、 その迫力が怖くて、本当は素晴らしいのか、どうかも分からないのです」 「どういうことかね?」「そんなに見つめられたら素晴らしい、としか言えません」 「うむ。そうかね。しかし、それでいいのだ。それもこれも含めてわたしの曲なのだよ」 「はぁ」 「目は口ほどにモノを言う、と言うだろう。目を見ていれば君のことが良く分かる それは下手な会話をするよりも重要なことじゃないかな?どうだろう。」 「はぁ、しかし、これはお兄様の曲を。。。」
「いいのだ。わたしの曲などどうでもいいのだ。これは手段の一つに過ぎないのだよ」 「はぁ」 「わたしはきみのことをもっと知りたいのだ」 「はぁ、しかし。。。」 「言うな。もうナニも言うな。目は口程にモノを。。。」 「はぁ」
「ほら、外を見てごらん。いかにも空が青くて透き通っているね。 もうそろそろ夏は終ろうとしているのにまだ少し暑いな。そういえば台風は何処に消えたのだろう? そうだ。三国志の話をしないか。ところできみの一番好きな武将は誰なんだい?」 「はぁ。わたしは仕事でそろそろ出掛けますので」 「うむ。そうか。無理に止めはしまい。悲しいことだが、無理に止めてもどうにならない ことは良く分かっている。そういう事が世の中にあるって事も。わたしだってそのくらいの事は分かっているつもりだよ。 しかし、これだけは覚えておいてくれ。 大切なものは目に見えないのだよ」
「はぁ。それでは行ってきます」 「うむ。気をつけてな。いいかぁ、大切なものは目に。。。」 もうJ三郎の姿は見えなくなった。 何気ない朝の会話である。

