冷たい雨が降っていた。いつの間にか傘は壊れ本来の形を失っていた。 そして風が吹く度にそれはギシギシと揺れた。片手にハードケースを持っていたためにわたしの顔を雨が濡らし 冷たい風が吹き抜けた。ご自慢の髪型を崩されたわたしはついカッとし空を見上げると叫んだ。 「おぉ、貴様らもわたしが雨、風、雷の神であるバールの使いであるということを知らぬ訳ではあるまい!」 しかし、風雨は弱くなるどころか強くなり始めた。「むぅ、これは一体どうしたことだ」 耳を澄ますと彼らの声が聞こえて来た。わたしは全てを理解した。 「うむ、うむなるほど。これは貴様らの、いや、君たちなりの歓迎の印なのだな! いや、そういうことならもっと降り注ぐが良い!吹きつけるが良い!おぉ、君たちの心遣いに大いに感謝しよう。 そう思えばこの冷たい雨もなんて心地よい、いや、これはむしろ愛撫でさえある!このままわたしをとろけさせておくれ!」 わたしは傘を投げ捨て全裸になろうと試みたが、向こうから人が来たので止めた。 使徒であることがばれると色々と面倒であるから。わたしは大人しく目的地である7Th Avenuに潜入し、出番を待った。 時間になった。わたしは「愛とその効用」について時折ささやき声を交えながら高らかに唄った。 そして演奏が終わると時限爆弾を抱えていたわたしは急ぎ足でその場を離れた。外にはまだ雨が降っていた。 わたしはまたもや耳を澄ますと彼らの声を聞いた。 おぉ、なんということだろう。一体誰が信じてくれるだろうか?しかし聞いたことは言わねばなるまい。 この雨は我らの演奏に対す彼らの涙なのだそうだ。勿論それが感動の涙なのか、憐れみの涙なのか、それは知る由もないが。
7Th Avenuに潜入
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