夜中、街を歩いていると遠くに怪しげな明かりが見える。「こんな遅くに、一体何が。。?」 近づいてみるとそこは一見、ガラクタのようなものや、使い物にならなそうなモノや、ナニが置いてある。 外から内部をチラチラとうかがうと頑固そうなおやじさんが店番をしている。 わたしは自然なそぶりで両手を挙げて店に入る。
「こんにちわ、いや、、こんばんは、かな、月の光があまりに綺麗でぼんやりと外を見ていたら 黒アゲハ蝶が飛んでいまして。で、後をつけてフラフラと歩いていたらこの店の前へと」
店のおやじの警戒心を解くためである。しかし、一向におやじさんの表情は和らがない。そこで わたしは後ろを向き、店内のモノを見回る振りをしながら無防備な背中をおやじさんに向けた。 ”やるなら、どうぞ、やってください。しかし、わたしに敵意はありませんよ”というメッセージである。
すると「お兄さん、好きなだけ見ていきな。なぁに朝まで見てたって構いやしねぇよ」という おやじさんの声が聞こえた。”ありがとうございます”わたしは目で合図をすると店内を見回した。 すると大きな置時計が目に付いた。
「これは音は鳴るのですかね?」
「さぁ、どうかね、なんせ、30年も前に買ったやつだからね。しかも今日店に置いたばっかりさぁね。 なんならいじってみてくれ」
「いいんですか、いじっても」
「あぁ、構わんよ、是非いじりまわしてくれ」
「お言葉に甘えて、いじりまわしますよ」
色々と触っていると音が鳴ることが判明した。
「おいくら?」わたしは尋ねた。「そうさな、500円でどうだい?」
「買いましょう」「すまんね、兄さん」 「いや、お互い様ですよ」「また、寄ってくれよ」
ちょうど目覚まし時計が欲しかったのでいい買い物だと思った。
「それじゃぁ、また」扉を開けようとすると後ろからおやじさんの声が聞こえた。
「時よ、とどまれ!、おまえはじつに美しい!」
どこかで聞いた言葉だな?”わたの思考が一瞬、停止したその時、扉はひとりでに開き始めたのである。
悪の誘惑者
雑感
