夜遅く帰宅途中に家の近くまで来ると見知らぬクルマが前からスピードを落として 近づいてくる。わたしの横で止まると窓がスッーと開いた。わたしは一瞬、身構えた。
「スイマセン、ダイエーはどこですか?」と片言の日本語が聞こえる。 顔を見ると頭にターバンを巻いている。精悍な顔つきの男性が二人。 わたしは3秒ほど頭に地図を描いた後で言った。「この辺りにダイエーはない」 「スーパーならありますか?何か売っているところは?」 「それなら10M進んだらそこを右に曲がって線路にぶつかったら左折。 次の信号を右に曲がると綱島街道に出るのでそこを右折して150M位進むとナニがあり申す」 すると再び「そこはダイエーですか?」と聞いてきた。 わたしは穏やかな笑みを浮かべ言う。 「いや、ソコはダイエーではない」 2人はヒソヒソやった後、「ちょっと難しい。他の行き方はないか?」 と聞いてきた。 「それなら5M戻ってそのまま直進し線路にぶつかったら左折。 次の信号を右に曲がると綱島街道に出るのでそこを右折して150M位進むとナニがあり申す」 またもや「そこはダイエーですか?」と聞いてきた。 わたしはなおも穏やかな笑みを浮かべ言う。 「いや、ソコはダイエーではない」 2人はヒソヒソやった後、「まだ難しい。他の行き方はないか?」と聞いてきた。 「ここは細い道なので、いずれにせよその道まで出なければ駄目なのだ。ちょっと行けば赤い光が見えるよ」 「それがダイエーですね?」と男。
その時、わたしは悟った。「ダイエー」という言葉に惑わされてはイカン。 そう言って奴らはわたしを挑発しているのだ。彼等は恐らく天からの使いのモノで人間の生前の生態を調査し、 死後何処に送るのか、を決める事ができる権限をもった調査団員か何かなのだ。 すべてを理解したわたしは言った。 「分かりました!わたしがダイエーまで案内しませう!乗せなさい!ダイエーでいいのですな! わたしを車に乗せなさい!さぁ、早く!わたしを!」 男達は顔を見合わせ、「いや、いいです。有難う。うん、うん、分かった。10M行って右ですね」 と言うと走り出してしまった。 わたしは車の行く先を見届けると一人呟いた。「時間的に店は終っているな。」

