「塩」がない

最近、記憶力の減退が非常に激しい。もう憶えていることはほとんどないのでは?という気さえする。そもそも記憶など目に見えないものなので何処かに行ってしまったり微妙に脚色されてしまっても別に構わないものなのだ、と開き直ることにした。だからといってわたしの思ひ出の全てが美しい薔薇色に染まる・・・ということも有り得ないのは不思議なところだ。ところで今日はほうれん草と本しめじのバターソテーを作ることにした。わたしはほうれん草としめじをフライパンで焼き始めるとあることに気づいた。さぁ、どうした。「塩」がない。「塩」がないのだ。「これはいかん!」わたしは近くのコンビニに「塩」を買いに行った。その道中、そういえばもうちょっと先に古本屋があるのを思い出した。そこで古本屋に行き30分ほど物色する。「これは!」と思うものがない。しかし、幸いにもわが町には古本屋が4件も存在する。しかも歩いて5分とかからない所にだ。そこで次の本屋、次の本屋、と巡り結局、「魔界衆/横山光輝」と「世界の神話伝説総解説」という本を買う。その後、駅ビルへ行きCDを物色しようとするが、結局、DVDコーナーを漁る。「カサブランカ」と「少林サッカー」と「1986W杯イングランド対アルゼンチン」が欲しくなるが、裏の解説を読んでいると買わなくてもいいような気になる。大体、これらは一度観ているのだ、ということに気づく。1階の食品売り場に行き惣菜屋さんで「煮込みハンバーグ」を買う。これはソースが美味そうだったからだ。駅ビルを出て商店街を歩く。はっ、と思い出しインスタント珈琲を買う。念のためにタバコも2箱買い万全の備えにする。レンタルビデオ屋に寄ろうとするが持ち物が多くなってきたので止める。帰り際、コンビニで牛乳を買う。途中、空を見上げると月が出ている。まだ満月ではないから狼になる必要はあるまい、などと思ったような気もする。部屋に着くと買い物を床にぶちまけ、本日の収穫モノを詳細にチェックする。2,3度チェックを繰り返すと、わたしはガックリと膝をつきうなだれる。「塩」はどこにも見当たらなかった。

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